研究会設立の動機

 地球温暖化問題はClimate Crisis、気候危機としてその深刻度は増すばかり。ほかにも海洋プラスチックごみ、原発の放射性廃棄物(核のゴミ)など、現在世界が抱える諸問題が未解決のまま負の遺産として次世代に引き継がれることに対して、次世代の Youth Power の異議申立ての声が高まっています。2021年11 月のグラスゴーCOP26 では、コロナ禍にもかかわらず、場外では沸き立つ若者のデモ行進は 10 万人に及びました。

 「次世代を担う若者に対して何かできないか?未解決のまま引き継いでしまうのではなく、一緒に解決策を求めるべきではないか?」かかる問題意識から、特に、情報格差が大きく社会の諸課題と接する機会が希薄な地方の若者に対して、その進路を決める前の高校生の段階で、大人世代と一緒にグローバル社会の諸課題を考察し、科学的に解決策を探求する機会を創出することが有意義と考え、2020年8月、早崎潮流発電プロジェクトがスタートしました。県立口加高校の探究授業を通じて、高校生が地元にある早崎の潮流という身近なテーマで高度な科学のフロンティアに触れ、地球規模の課題解決にむけた探究の機会づくりに、第一線で活躍する大学の研究者、企業のエンジニアがボランティアで支援しました。

 ところで、パリ協定で求められる 1.5℃目標をめざして 2050 年までにゼロエミッションを達成するために、わが国は2030年までに2013年比46%の温暖化ガス削減目標を掲げており、再生可能エネルギーの拡大が求められています。太陽光発電は日本が生み育てた技術であったのに、いまは国内の供給は中国からの輸入に左右されています。風力発電でも先駆的にビジネスに参入した日本企業の努力は、技術を独占する欧州モデルと旧態依然の電力システムの相克の中で国内産業としての成長の芽が消えかけている状況です。

 わが国は、島国で排他的経済水域(EEZ)では世界 6 位の面積を有し、黒潮や対馬海流といった巨大海流が流れ、複雑な海岸は潮流に富んでいますが、海流潮流のエネルギー開発についてはあまり進んでいないのが現状で、わが国で独自に技術や事業開発するポテンシャルが残っています。

 潮流発電に関しては、大学研究で有望な研究成果がある一方、事業化商業化にむけたドライビングフォースがないことから、身近な潮流を「下町ロケット」風に電気エネルギーに活用できることを示すことで、潮流発電を身近なものにしてその拡大の機運を高めるとともに、次世代を担う若者や地域への啓蒙・教育を目的に、この活動組織として、2021年12月、非営利任意団体の早崎潮流発電推進研究会が発足しました。

 ところで、2022 年 2 月以降、ロシアによるウクライナ侵略がエネルギー危機を深める中で、地域的に偏在し、供給の不安定さ、価格の乱高下から免れない化石燃料への依存から脱却するため、経済安全保障の観点から、より安定的に供給できる再生可能エネルギーへの転換を急ぐ動きが高まっています。ロシアへの依存が高かった EU は、2030 年までに再生可能エネルギー電力の割合を 69%に高めることを決定しました。

潮流は、風力や太陽光のように天候に左右されず、予測可能性、確実性、安定性において優位性があります。日本における潮流発電のポテンシャルは約22GW、適地を考慮すると現実的な導入量は約1.9GW、発電可能量は年間電力需要の約 0.7%と試算されています(NEDO,2014)。その後の技術開発を考慮すれば、潮流発電のポテンシャルはより拡大していると期待されます。エネルギー安全保障上も外国からの輸入に依存しない、かつ安定的、陸地に近い沿岸海域のエネルギー源として、潮流発電の社会実装にむけた活動は、その緊要性は一層高まってきている。今般、本研究会組織を非営利型一般社団法人として格上げし、対外交渉を強化することによって、その活動(a)中高生への教育活動、(b)潮流発電の実用技術の確立、(c)地域社会への啓蒙活動をさらに強化していく所存です。

研究会概要

名称一般社団法人 早崎潮流発電推進研究会
所在地〒859-2215 長崎県南島原市西有家町長野1776 番地(旧長野小学校1階)
会員数30
代表理事・理事長相川 武利
副理事長居駒 知樹(日本大学理工学部教授)
理事木上 洋一(佐賀大学教授)
林田  滋(長崎総合科学大学名誉教授)
中島 賢治(佐世保高専教授)
片山 泰成(口加高校教諭)
村田 国博(島原半島南部漁業協同組合)
渡瀬 基継(本田重工株式会社)
古野 直樹(古野電気株式会社)
中山竜一郎(ナカシマプロペラ株式会社)
監事片岡 万枝(片岡公認会計士事務所)